イスタンブール散歩行 28 最後の夜
ローマ時代のイスタンブール市内巡りを終わり、タクシム広場に戻ろうとバスを探す。
カーリエ美術館に来るときに降りたあたりでバスを待ったがバスは通り過ぎるだけで一向に止まらない。一人旅だとバス停一つ探すのも難儀である。
少し歩いてバスが固まって止まっているあたりでバス会社の人らしいオジサンに「バス・ノル・アルネ。タクシムヒロバ・バス・ドコ・アルカ?」とたどたどしく英語で訊くと、オジサンは一呼吸おいて「フランス語ならわかるぞ」という。
トルコでフランス語を話せなどという拷問にあうとは想像していなかったが、どうにもならないのでメモ帳を取り出し、大きく「TAKSIM 87」と行先とバスの番号を書いて見せると、意味が通じたらしく通りの向こう側の方を指さして「エイト・セブン!」と繰り返す。「あっちに87番が止まるから間違いなく乗れよ」ということだろう。おじさんの親切に感謝。
タクシム広場に戻りロカンタでおそい昼食。トマトの煮込み料理とナスと羊のひき肉の煮込みにオリーブとコーンのサラダ。そしてパンであわせて12.5YTL(約1250円)。今日は奮発してしまったが、結局安食堂で済ましてしまったわけだ。
夕暮れになってガラタ橋に出向く。今日が最後のイスタンブールの夜になるので、天気が良ければ見たい光景があったのだ。
これがその光景。くれなずむ空に灯のともったモスク。その上には三日月が輝く…
日がすっかり落ちるまでガラタ橋のたもとでゆっくりとこの光景を見いっていた。ずっと眺めているとなんだかこの三日月が見たくてイスタンブールまで来たのでは、という気になってきたから不思議である。
ぶらぶらとホテルに帰る途中でジュースのスタンドがあったのでオレンジジュースを一杯飲む。生のオレンジをその場で絞ってくれたのでフレッシュでおいしかった。
最後の夜だから盛大に食事を、と思っていたが遅い昼食がヘビーだったのとモスクの夜景の余韻のためかこのジュースが最後の晩餐になってしまった。