香港散歩行 2 なぜ香港へ?
ワタクシが初めて香港を訪れたのは1999年の1月でした。
このチケットで行ける街はグアム、香港、ソウル、青島、大連、北京、上海、天津、台北と選択肢はたくさんありました。新婚旅行のときに香港の啓徳空港でトランジットをした以外はいずれも行ったことのない場所です。
返還フィーバーも冷め切った香港を選んだのは、たまたま赴任前に読んでいた沢木耕太郎の「深夜特急」に影響されたためです。その後鳥取市に赴任後も沢木耕太郎が旅したルートを25年後にたどった西牟田靖の「僕たちの深夜特急」に出会い、それをきっかけに下川裕治や蔵前仁一のことを知り、彼らの本を読んでアジアの旅の面白さに目覚めていったのでした。
それまで香港という街のことはあまり知らず、海外旅行の初歩の街・グルメと買い物目当てのパッケージツアーの定番という印象しかなく、一人で散歩を楽しめる街とは思ってもみず、特別興味の湧く街ではありませんでした。
しかし、これらの本の中に描かれた香港はワタクシの想像していた香港と全く異なり、一つひとつの街角を舞台のようにして庶民や旅人が姿が生き生きと描かれていました。
「香港はおもしろそうだ・・・」 これらの本を通じて得た印象がこうでした。とりわけ「おもしろい」要因のひとつが重慶大廈(マンション)の存在でした。
●「・・・沢木氏が泊まったという金宮招待所。原作から以下の条件を手がかりに探してみた。・・・条件からす れば重慶大廈だと思う。・・・香港の一等地に聳え立つ、老朽化した雑居ビル。いわゆる魔窟だ。」
●「・・・朽ち果てそうなビルで、金のない旅行者は必ずといっていいほどこのビルのゲストハウスに流れてき たのである。ここを利用するタイプの旅行者を「重慶族」というそうだ・・・」
下川 裕治 「アジア達人旅行」
●「超一流ホテルの向かい側になぜこんなボロボロビルが表通りに建っているのだ・・・日本人には有名でも たいていの香港人は生まれてから一度も足を踏み入れたことがないという・・・」
藤木 弘子 「秘伝香港街歩き術」
昭文社 「個人旅行 香港」
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(北京道から見た11年前のボロボロな建物正面。室外機が落っこちない
か心配でした。今はどうかな?)
これらの記述を見て、普通の人(家人・豚児上下など典型です)はこんな危なっかしくてシミッタレた安宿ビルは敬遠するのでしょうが、逆にワタクシはここに足を踏み入れてみたい!と思ってしまったのです。
ワタクシが訪れた10年くらい前は、ゲストハウスの強引な客引きを掻き分けてビルに一歩入ったとたん、なんともいえない強烈なスパイスの臭いが鼻を突き、インド・パキスタン系とアフリカ系の人でごった返している充分怪しい建物でした。
今では香港政府観光局の公式パンフレットにも観光スポットとして載っているくらい香港での社会的地位?も向上しているようです。両替がてら新しい重慶マンションを訪れるのも今回の楽しみのひとつです。