12月20日 コルカタ 4日目
コルカタ4日目。
今日はS氏の案内で市内めぐりにでかけます。
S氏の知り合いのタクシー運転手の車を一日チャーターして、車で回ります。ちょっと贅沢ですが、足の痛みがきつくなっていましたのでなかなか自分の足だけで回るのは厳しくなっていたからです。
参拝者も多く、地方からもやってくるそうです。内部の建物には女神の象徴である黒い石が置かれ、その石にカーリー女神の顔が書いてあるとのことでした。
参拝者が多い分、寺院の周辺には参拝者目当ての怪しい輩がうようよいます。
実は2日目に街歩きしたとき、ここにも来ました。
ところが、自称ガイドみたいなオヤジに付きまとわれ、要領がわからないので、彼に着いていくと寺院の中に入ろうとすると金を要求してきたため、結局中には入らずじまいで退散していたのでした。
ヒンズー寺院は裸足で入らなければなりませんが入場料などありません。したがってこのオヤジは無知な観光客を狙ったぼったくり野郎だったわけですね・・・。
今日はS氏の案内があるので安心です。
寺院に入るには参道を通り土足を周囲の土産物屋に預けなければなりません。そこでS氏の知り合いの店に靴を預け、裸足になって寺院の中に進みます。
S氏によると寺院の周りには僧侶がたくさんいて、参拝者に案内するからと声をかけ、実際に寺院の内部を案内は一応するのですが高額の料金(1000ルピー以上!物価の安いインドでは結構な金額です!)を要求する悪質な僧侶がいるから声をかけられても知らん顔するよう釘をさされました。
たしかにそれらしき人がたくさんうろついています。もしかしたらワタクシに金を要求してきたのもその一人なのかもしれません。
ガイドブックには寺院内は撮影禁止となっていましたが、S氏は自分が合図をするから、その時は写真を撮っていいと言います。
裸足になって寺院内に入ると、石の床のところどころが赤い水で濡れています・・・小さな建物の中では犬が赤い水を舐めています・・・
ここは参拝者が神様にささげる生贄のヤギの首をはねる場所でした・・・。
生贄のヤギはこの建物に連れてこられても自分の運命はわかっておらずおとなしくしていましたが、処刑人に持ち上げられるとようやく気が付いたようで激しく暴れます。
写真の↑右側の小さい2本の石の棒みたいなのが断頭台です。ここにヤギの首をはさむと、ワタクシの目の前でアッサリと、実にアッサリと終わってしまいました。
体の方はしばらく痙攣しています・・・。
こわばった表情で見つめていたワタクシの後ろからS氏が「あなたはついているネ。案内してもこのシーンを見られないこともよくある」と言います・・・。
近くの別の建物では生贄にされたヤギの後処理が行われているようです。大きな手提げ袋にヤギの首を入れて持っていく人がいます・・・。払い下げて貰い、料理にでもするのでしょうか・・・。
さらに奥へ進みます。ここからは撮影禁止でした。
ご神体の石が安置されている建物は参拝者で大混雑していました。やむなくすぐ隣の建物に入り、S氏と一緒に鐘を鳴らし、僧侶が唱える呪文を聞こえたとおりに唱えてお詣りします。お布施を挙げるとす僧侶からおでこに赤い印を指でつけてもらいました。
ご神体の安置された建物のごった返す人混みの中からチラリと目玉を描いた黒い石が見えました。
ご神体のカーリー女神です。
そのとたんS氏が熱心に祈り始めたのでワタクシもあわてて手を合わせ、旅の安全を祈願します。
S氏によると寺院に来ても人混みのためにご神体を目にできないことも少なくないそうで、ここでも「ついているネ」と言われます。
かなり刺激的なカーリー女神寺院を後にし、今度はマザーハウスを訪れます。
ハウラー橋の袂にあるフラワーマーケットです。S氏によるとインドでは冠婚葬祭はもとより日常生活でも信仰のため花をたくさん使うとのことでした。ここはそうした花のマーケットです。
たいそう賑わっていますが、地元度は100%で外国人観光客らしき姿は全く見かけません。
この人は花輪を売り歩いているようでした。
ハウラー橋を超えてフーグリ川を渡りイギリスが作った植物園に向かいます。
入口からちょっと歩いて植物園のはずれ近くにグレート・バ二ヤン・ツリーがあります。
写真ではわかりにくいかもしれませんが、世界で一番広い一本の木です。ギネスブックにも登録されているそうです。
下から木の幹が地面から生えているように見えますが実際は逆で、枝から生えた気根というものが根を張って枝を支えているのです。奇観ですね。
昼食を3人で食べた後、最後にラジ・バザールというエリアの近くにあるスラムに行くことにしました。
コルカタはサダルストリート周辺だけでも日本では考えられないような汚い場所がありますが、S氏によるとこのスラムはそれを上回るものだそうです。
別に汚い場所が好き、という訳ではないのですが、現代の日本ではお目にかかれないような光景を目にしてみたい、という単純な動機からスラムに行ってみることにしたのです。
S氏はスラムに行く場合はお菓子を買っても持っていく必要がある、といいます。お菓子を子供たちに配ることで見学を事実上認めてもらうのだ、と言います。
スラムに近づき、車から降りて売店(らしきもの)で小さなお菓子をたくさん買い込みます。すでにあたりは強烈な匂いを発散するごみ溜めのような様子を呈しています・・・。
ムスリム氏は車に残り、S氏とワタクシの2人だけお菓子を持ってスラムの中に入っていきます。
S氏の合図で通りがかりの子供にお菓子を与えました。するとどこから湧いてきたのかあとからあとから子供たちがお菓子を目当てにどんどん集まってきて取り囲まれてしまいます。
そのうち大人まで出てきて手を出して取り囲むのでまったく身動きが取れなくなってしまいました。
このままではもう収拾がつかないと判断し、ムスリム氏の待機する車に乗って「脱出」を図ります。子供たちは車が動き出しても手を差し出してお菓子を求めます。
最後はS氏がお菓子を車からばらまいて子供たちの気をそらし、車を前に進める始末です。
何とも言えぬスラム見学でしたが、日本では見られない光景であることは間違いありませんでした・・・。
あちこち回ってきて時間も経過し、精神的にもスラム見学で疲れ果てたので市内見学はここらで終わりにしサダル・ストリートに戻ります。
宿に戻るとおでこの赤い印に気付いたスタッフが「カーリー?」と訊いてきます。うなずいて片手で首を刎ねる真似をするとスタッフが口を揃えて「オオッー!」。 どうやら意味が通じたようです。
夜、宿の前のチャイ屋でチャイを啜りながら今日の観光をぼんやり振り返ります。
これまでのアジアの旅はいわゆる観光名所を主に見て、その周りの街の光景を楽しんできました。
今日も名所をいくつか訪れましたが、ワタクシに強烈な印象を与えたのはそうした名所以上にスラムであり、路上で体を洗う男たちや路上で生まれ、路上で育ち、路上で死んでいく人たちでした。
それは観光スポットではなくちょっと街を歩いていればいやでも目にする光景でした。
あと数週間滞在するであろうインドでは、もちろん有名観光スポットにも行くでしょうが、インド人にとっては日常的でなんでもない光景が自分にとっては一番の見どころになるんだろうな、という思いが浮かんできました。
夜のニューマーケット前の広場です。お喋りに夢中な人たちでいっぱいです。
インドで庶民の娯楽と言えば映画が有名ですが、こうして街に出て知り合いや友達とおしゃべりすることも庶民の楽しい娯楽なんでしょうね・・・。
宿に戻る前に夕食にしました。夕食はまたこの「レストラン」です。歩道を占拠してレストランを自称しております。その意気やよし、というところでしょうか。
中華麺を注文し、卵を入れるか尋ねられ、うっかりOKしたらこんなのが出てきました。あんかけのような不思議な味になってしまいました。