パパグロッソの街歩き・一人旅

リタイア組です。身体は太いですが、ブログは細々と続けていきます。

ホーチミン流 道の渡り方

 ホーチミンでは、車両は右側通行で日本と反対である。それだけでも日本人観光客が道を渡るのに慣れるのが大変である。

 さらに困ったことに、通りを我が物顔に走るバイクがほとんど信号を守らない。大きな交差点ではそうでもないようだが、歩行者も含め交通ルールを守る気持ちは薄いようだ。

 したがって観光客が信号に従って道を渡ろうとしても、いつまでたっても道を渡れない、なんてことになりかねない。

 おまけに右折のバイク(日本でいう左折車)は青信号で横断歩道を歩行者が渡っていても、お構いなしで右折して進んでくる。

 到着2日目に1人で街を歩きはじめたときは、バイクの量の多さとあまりにルールを無視した走りに呆然としてしまった。

 とは云っても道を渡らなければいつまでたっても同じところにいつづけるしかない。

 そこで道をわたるために最初にとった方法は…

道路を横断する地元の人を見つける

ことだった。

 道を渡ろうとしている地元の人(男性だったらほぼ95%がサンダル履きの人。女性はあのパジャマ姿の人)を見つけ、すばやくその人のところまで小走りで近づく。

 その人が渡り出すと、バイクの運転手から見て、やや斜め後方にぴったりと着く。そして同じその人と同じ歩調で歩いていく。止まれば一緒に止まり、歩き出すと小生も歩き出す…。

 つまり、前を歩く人には申し訳ないが、言わばこの人を盾にして道を渡るのだ。バイクにはねられるときはまずこの人が先になる。(ゴメンナサイ)

 この方法はかなりの成果を収め、一人では到底渡れない広い通りやバイクがびゅんびゅん行きかう道も渡ることができるようになった。
 
 だんだん道の渡り方にも慣れてくると地元の人を探すことも大変なので今度は自分1人で渡ることとなる。

 そこで、いよいよ1人でバイクにはねられずに道を渡るコツである。それは…

バイクの運転手の期待、あるいは予想を裏切らない歩き方をする

ことである。

 まず、びゅんびゅん走っているバイクに負けずに、勇気を振り絞って道に足を踏み出す。(大体このこと自体、横断歩道のないところでほとんどやったので、バイクのルール無視をあまり非難できる筋合いではないのですが…)

 このとき、目の前のバイクの運転手だけでなく、ずっと遠くにいる運転手もこちらの様子を見ているのだ。(メガネをかけている人はほとんどおらず、みんな遠目がきくようである。間違いない!)

 目のいい運転手は小生の歩き方を見て、自分のバイクのスピードと小生までの距離を瞬時に計算し、小生を跳ねないように進行方向、スピードを決め、調節しているのだ。(と、小生は確信した!)

 したがって、小生が歩くのを止めることは予想した進行方向に来ないことだから衝突の危険はない。ところがバイクの波にさらされ、恐怖心から早く渡って危険から逃れたい、と歩くスピードを速めてしまうと、バイクの運転手の計算を超えた結果となってしまい、バイクと激突してしまう危険が一挙に高まるのだ。

 怖くなっても立ち止まってさえいれば、ホーチミンの荒くれバイクといえども故意にぶつけてくることはないのだ。(と、信じてました。)

 理屈は以上のとおりだが、実際の歩き方を表現すると、向かってくるバイクの運転手の顔を見ながら、心の中で「ブツカンナイデチョ、ブツカンナイデチョ…」とお経のように呪文を唱え、へっぴり腰でソロリソロリと歩いていくという、いささかみっともない渡り方だった。

 無事渡れたとたん、仏陀でも救世主でも、朝5時にたたき起こされたアラーの神にでも感謝したくなるのだ。

 とにかく、道ひとつ渡るのにもホーチミンはなかなか油断がならない街なのだ。

(残念ながら道を渡るときは斯くの如き必死の作業なので、これに関する写真を撮る余裕はありませんでした。)