イスタンブール散歩行 26 カーリエ美術館
ヨーロッパサイドの新市街にあるオルタキョイから再びタクシム広場に戻り、こんどは金角湾の向こうにある旧市街にあるカーリエ美術館に行くことにした。
ずいぶんと非効率なコースだが、そこは一人旅の気ままさ。時間を気にせず思いつきで廻ることができる。
タクシム広場から87番のバスに乗り、ガラタ橋より西北の方角に位置するアタチュルク橋を渡って旧市街に入る。
バスの道すがら通り過ぎる停留所を見ていると、女性の服装はヨーロッパ諸国と変わらないトルコでも保守的な服装に身を包んでいる人も少なくないことがわかる。
新市街を通っている途中、集合住宅が密集するあたりで機関銃で武装した警官や装甲車が通りの出口を警備しているのを見かけた。
イスタンブール市内にもクルド人がたくさん居住している地区がある。年末あたりからイラクとの国境地帯でのPKK(クルド労働者党)とトルコ軍との戦闘が激化する中で、市内に住むクルド人への警戒も厳しくなっているという。
住民を装甲車で監視するとすればここがそのクルド人街のひとつなのだろうか。バスの乗客は特に関心は示さない。
エディルネカプの停留所で下車。道を訊きながらカーリエ美術館を目指す。
この美術館はもともとは5世紀に修道院として建てられたが、オスマン帝国時代になってモスクに改造されたものだ。壁一面を飾っていたモザイク画は漆喰で塗りつぶされ、20世紀になって漆喰の下のモザイクが発見され現在に至っている。これらのモザイクやフレスコ画はビザンチン芸術の中でも評価の高いものだそうである。
狭い門を入り、裏庭に出るとご多分にもれず、ここでもX線装置で手荷物検査があった。途中で武装した装甲車を見ているので今日はあまり違和感を感じなかった。
内部はそれほど広くはないが、天井や壁面、ドームには見事なモザイク画やフレスコ画が描かれている。見学者は数人しかいなかったのでのんびりじっくり鑑賞することができた。
アヤ・ソフィアもそうだが、漆喰で覆うだけで済ませてくれた当時のイスラム教徒のおかげで今こうして往年の輝きを見ることができる。
将来漆喰がはがされることを予想していたわけではあるまいが、当時のイスラム教徒の寛容さに感謝しなければならない。