ロンドン散歩行 5 空港からホテルへ
昼食後、満腹になってくると早朝から動き回っていたのでさすがにうつらうつらしてきました。
すると午後3時ころだったでしょうか、静かな機内に男性クルーのわめくような英語が響き渡ります。
乗客がトイレでタバコを吸ったことが発覚したようです。引き続いて日本人女性クルーが落ち着いたトー
ンで日本語でことの経緯を説明するとともに、毅然とした口調で「タバコを吸われたお客さまにはロンド
ン到着後警官と面談していただきます」と言い放ったのには少し驚いてしまいました。
まったく困った乗客もいるものです(…と今は禁煙しているから気楽に言えますが)。愛煙家にとって
は12時間もの禁煙はたにかに辛いのはわかりますが…。
それはともかく、男性クルーの放送で客室内の喫煙は“highly illeagal”であるということが聴き取
れ、なるほどそういう表現をするのかと妙に感心してしまいました。
ちょっとしたハプニングもありましたが、ロンドンまでの飛行は揺れもあまりなく、現地時間午後2時
そのまま飛行機はゆっくりと地上走行し、ターミナル5に到着しました。
ロンドンでは入国審査が厳しいと聞いていました。でもこんな善良小心なサラリーマンがイチャモンを
つけられることはあるまい、とたかをくくりつつも少し緊張しながら順路に従いシャトルに乗って入国審
査に向かいます。
昼の到着ですので入国に多少時間がかかってもいいや、とは思っていたのですが、審査所についてびっ
くり。
ちょうどアフリカからの便が到着したらしく、アフリカ系の人々が長蛇の列を作っています。ここは成
田のようにブースごとに並ぶのでなく、列を作って順次あいている審査ブースに進んでいく方式をとって
いました。銀行のATMの前に並ぶのと同じ方式です。
最初はこんな光景でもモノ珍しいので興味深く見ていましたが、平日でブースにいる係官が少ないせい
もあり列が遅々として進まず、だんだんイライラしてきました。
ブースでのやりとりを遠目に見ていると、一族郎党でイギリスに引っ越してきたのかと思うほど、アフ
リカからの乗客は1グループの人数が多く、それらが1人ひとりぶ厚い書類を手に持って入国審査官に何
やら訴えるのでやたらと時間がかかるのです。
列の後方から見てると審査官の少し手前に椅子に座っている乗客がいるので、長く待たされたので審査
直前には座れるのかなと思っていたところ、どうやら彼らはさらに確認する事項があるかなにかで座って
待機させられていたようでした。どうも聞きしに勝る厳重なチェックをしているようですね。
リスボン散歩行に際して、乗り継ぎ地のパリでEU入国となったときはパスポートをちらりと見ただけ
で質問もなく、スタンプも押してくれなかったのと比べると大違いですね。
審査官の席の上の壁に大書された「UK BORDER」という文字からは「どうだおそれいったか!
いい加減なやつは入国させね~ぞ!」という大英帝国の意志がにじみ出ているような気がしました
立ちっぱなしで足が痛くなりそうになったころ、ようやく“Next、number 6!”の声がかかっていよ
いよワタクシの番となりました。指定された番号のブースに進みます。金髪の女性審査官です。
ハロー!と元気に挨拶し、パスポートとわざわざホテルの名前をメモ書きしたeチケットの控に加え、
大盤振る舞いしてホテルバウチャーまで彼女に渡しました。もちろんニッコリ笑いながら…。
笑顔の効果があったのか金髪審査官は書類を見ながら「成田から来たの?」「グループ?それとも一
人?」「ロンドンははじめてね?」…などとほとんどこちらが“Yes”と答えればすむ質問しか発せず、
無罪釈放となりました。それでもこんなにいくつも質問された入国審査は初めてでした。撮影禁止エリア
でしたので画像がないのが残念です。
ひとり旅で次の大きな関門は現地空港からホテルまで無事にたどり着くことです。ヒースロー空港から
ロンドン中心部までは値段を優先すれば地下鉄、大荷物があるならタクシーなのでしょうが、今回は早さ
を優先してヒースローエクスプレスを利用しました。
窓口で往復のチケットを32ポンドで買います。初めての英語の本場イギリスでの買い物が、自分のひ
どい英語でもうまく行ったことに内心拍手をしながら地下のホームに降りていきます。
ヒースローエキスプレスはターミナル5から数分でターミナル1・2・3に着きます。ここまでは無料
をいれてもかなりの速さ。値段が高いだけあります。
…こう書くとすんなり乗れたように思われますが、実際は「この列車でいいのか?」と汗をかきかき何
人にも訊きまくってあたふたと乗り込んだというのがほんとうのところです。
地下駅を出発し、途中から地上の線路を走ります。近代的な設備の空港内の施設ではあまりピンときま
せんでしたが、地上の周囲の景色や日本ではみかけない煉瓦の建物や屋根の上の煙突を見ると「いよいよ
イギリスに来たんだなあ」と小さな感慨が湧いてきます。
明るい駅でした。
駅の見物は後日に譲ってホテルの最寄の地下鉄駅のピムリコ駅に向かいます。地下鉄のホームにはたど
りついたのですが、さてどっちの方面かよくわかりません。
そこでホームに立っていた中年の女性に尋ねると満面の笑顔で反対側のホームのほうがベターだと教え
てくれました。街の人と最初のささいな会話がうまくいったことが長時間の飛行の疲れを癒してくれま
す。
ピムリコ駅で下車し、ガイドブックの地図を片手にホテルのある通りを探して道をすすみますが、どう
もよくわかりません。通りかかった若い二人連れの女の子に道を尋ねると、笑いながら自分たちもロンドンは初めなのでわからないという返事。思わず“ミー・ツー”と言うとさらにお互いに大笑いとなりま
した。
結局他の人に尋ねた結果反対方向を歩いていたことがわかり、道を戻って教えられたとおり進むとめざ
すベルグレーブ・ロードに出ることができました。
この通りの両側は4階建ての白っぽい建物がず~っと建っています。最初は一軒の建物かと見間違えた
のですが、よく見ると何軒ものホテルや住宅がつながって建っているようでした。
途中に赤い電話ボックスがありました。いかにもイギリスらしいので写真を撮ってしまいました。
少し歩いてようやく今回の1軒目のメリタ・ハウス・ホテルに到着です。