香港散歩行 16 中華人民共和国にちょっとだけ
倫敦大酒樓で朝食を楽しんだ後、再び地下鉄に乗り、尖沙咀駅で降ります。
香港は本来中華人民共和国の領土内ですが、一国二制度ということで返還後しばらくは現行の体制が維持されることとなっています。しかし、香港島には人民解放軍の大きな建物もありました。徐々に中国本土の影響が浸透しつつあるのでしょうね。
それはともかくとして、一応は香港と中国は国境を隔てているので陸路で国境を渡ってみようと思い立ったのです。過去の海外旅行は一回を除けばずっとひとつの国を訪れる旅ばかりですので、陸路で国境を渡るのはこれがはじめてになります。
深圳には鉄道=東鐵綫で行くことにしました。
尖沙咀駅を降りていったん彌敦道に上がってからまた地下道にもぐって東鐵綫の始発駅の尖東駅から紅磡駅まで出ます。あとでわかったことですが、そのまま乗り換えず深圳に向かってもよかったのです。しかし10年前には尖東駅はなく、東鐵綫の始発駅は紅磡駅だったので頭が混乱してしまい、紅磡駅から出発することにしたのでした。
香港側の国境の駅である羅湖までの切符は33HK$でした。窓口で買った切符は日本のテレカみたいなプラスチックの切符です。コレも後でわかったことですが、この路線もオクトパスカードが使えたんですね。
紅磡駅で切符を買ったり、羅湖行きの電車のホームを間違えたりウロウロしていたので、結局紅磡駅を出発したのは午前9時過ぎになってしまいました。
最初は都会地を走っていたのですが、しばらくするとどんどん田舎の風景が車窓から見えてきます。
約40分で国境の駅、羅湖に到着します。
ホームに降り、案内板にしたがって歩いて行きます。
まずは香港から出国の手続きが必要です。まったく普通のイミグレーションと同じで、列に並んで窓口の係官にパスポートを見せると、香港入国の際に記入した入国カードを取られてしまいます。やはり国境なんですね。
そこを出るといよいよ中華人民共和国エリアです。
看板の文字がすでに繁体漢字から中国の簡体漢字に変わっています。
ここを進むと中国側のイミグレーションがあって入国手続きを行います。しばらく列に並んで自分の順番になり、係官にパスポートを渡すと「△×$%&”・・・」となにやら私に向かって係官がいっております。
それが癖のある英語だとわかるのに1~2秒かかりました。うっかり入国カードを書いていなかったので「カードを書いて来い」と言っていたのでした。
言われて振り返ってみると壁際のテーブルのところにカードがたくさんありました。あわてて机のところまで戻って入国カードを記入し、もう一度並んでようやく中国へ入国です。やれやれ…。
出口への案内版にしたがって歩いていくと建物の外に出ました。人民元を全く持っていなかったので両替所をさがそうと、建物の中に戻ろうとすると警備の警官に押しとどめられてしまいました。どうやら今出てきた出口は再入場不可の出口のようでした。
警官に両替所はないか訊くと、なんとこの警官は写真↓の右側に写っている売店にワタクシを連れて行き、ここで両替できるといいます。
その店は売り子の女の子が一人の普通のキオスクで、どう見ても正規の両替所とは思えません。女の子が警官の知り合いなのか、闇両替で賄賂でも貰っているのかどうかわかりませんが、目の前に警官がいるので断るわけにも行かず、必要最小限の2000円だけ両替することにしました。
愛想のない売り子はワタクシから千円札を2枚受け取るとためつすがめつ紙幣を見てから、古い100元札1枚ともっと古い10元札を2枚よこしました。つまり2000円が120元というわけですね。1元=16.67円というわけです。
人民元の円レートなど知りませんでしたし、どうせろくなレートではあるまいとは思いましたが、いつまでも警官がいなくならないのでやむを得ず紙幣を受け取り、ついでにチューインガムをひとつ買いました。チューインガム一個が5元=約80円。なんだか高いチューインガムだなあ、と思いましたが、いたしかたなく店をあとにしてぶらぶらと歩いていきます。
あとで水=5元、アイスクリーム3.5元を買い、残りのうち100元はあとで香港ドルに再両替してしまいました。
残った中国のお金がこれです。
あてもなく階段を登って↓下の写真の右側のデッキみたいなところを歩いていくと、建物のデッキに面したエリアには一見美容院みたいな店がずらりと並んでいて、若い女性が店の前にたって客引きをしています。
この女性たちがかなり強引で、こちらが無視して歩いていこうとすると、通せんぼをしたり袖をつかんで店の方に連れて行こうとします。言葉は中国語(國語)のようです。香港でもこんな強引な客引きにあったことはありません。真昼間から何の客引きだかわかりませんが、彼女らの手を引き剥がして走って逃げる始末です。
ほかでもかなり客引きが跋扈している印象でした。闇両替推薦警官といい、「なんだか香港よりガラが悪いなあ」というのが中華人民共和国の第一印象となってしまいました。
少し暑いので近くにあった大きくて値段の高そうなホテルに入ってみると、さすがマナーは洗練されており、女性職員は笑顔で英語で挨拶をかけてくれます。こちらは涼んだだけでまた玄関から出ようとしてもにっこりと笑顔とさわやかな挨拶で送ってくれました。
ほんの少ししか離れていないのにさっきのポン引き小姐とのあまりの落差に「今の中国の格差もこんなところに出てるのかなあ」などとなんだか的外れ感想をつぶやいてしまいました。
駅前の大きなショッピングセンターです。こういうところは香港とあまり変わらないような気がしますね。
ぶらぶら散歩するうちにとある建物の中に街市があるのを見つけました。
肉・魚・野菜・・・昔は露店で売っていたのが街市の中に吸収されたのでしょうね。
今回は国境を越えてみることそのものが目的でしたので、1時間半くらい散歩し、天気も下り坂だったので早々に切り上げ、香港に帰ることとしました。
ここが帰りの入り口なのですね。建物はこちらの方からしか入れないようです。
中国側のイミグレーションではかなりの数の人がならんでいたので出国に随分と時間がかかってしまいました。香港側のイミグレーションではちゃんと入国カードを書いて無事帰国?です。
赤いのが中国のスタンプです。やはりここは国境なんですね。
紅磡駅行きの電車はご覧の通りの混み様です。イミグレーションではちゃんと並んでいたのに中国の人はやはり列を作るのは苦手なのですかね。
混雑する電車の中で残ったガムを食べようと改めてガムの包装紙を見たとき、「苺味」の文字を思わず「毒味」と読み間違えたのは、わずかな時間でしたが中国の毒気にあてられたせいなのでしょうか。