パパグロッソの街歩き・一人旅

リタイア組です。身体は太いですが、ブログは細々と続けていきます。

「終わらざる夏」・・・浅田次郎

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 浅田次郎の小説を最近とみに読んでいるワタクシであります。NHKhiで「蒼穹の昴」を放送するにあたっては、放送前後に3回読み直し(暇だね!)するくらいでした。(最初はあまりに原作と違うので、びっくりして弁髪、もとい便秘になりそうでした。でも面白かった!)
 
 彼の作品で最近読んだのが最新作?の「終わらざる夏」です。
 8月15日の終戦のあとに、ソ連が攻め込んできた千島列島の最北端の島「占守島」を舞台にした物語です。
 
 スターリン大本営の身勝手な思惑とは別に赤紙1枚で召集された兵隊や、欧州戦線から解放され、郷里に帰るはずの赤軍兵士、勤労動員された女子挺身隊の悲しみが抑えたトーンでたんたんと描かれます。
 
 沖縄やサイパンを始めとする激戦地の悲惨な状況はこれまでも繰り返し小説や映画でも描かれてきましたが、千島列島の北端の小島での戦いはあまりテーマとされなかったそうです。
 
 荒々しく戦闘のシーンが描かれるわけではないのですが、日ソの兵隊、軍属、勤労動員された人々にとっては実に理不尽な最後、に至るまでの経過を丹念にかつ静かに描くことで却って戦争の不条理さ、悲惨さを浮き彫りにしている佳作だと思います。 
  
 それにしても浅田次郎の取り扱うジャンルって広いですね。