A3を読みました…う~ん。
9月のニュースでオウム真理教事件を追っかけている森達也氏が書いた「A3(エースリー)」が講談社主催のノンフィクション賞を受賞したことに対し、オウム問題に取り組んできた弁護士やカルト団体からの子供や家族の脱退を支援している団体が抗議をした、というニュースを見て、図書館で「A3」を借りて読んでみました。
オウム真理教のことはよくわからず、松本サリン事件勃発の少し前に松本から引越したワタクシは、当時テレビや新聞を見てただただ驚き、恐怖し、その異様さにあきれていましたが、改めてこの本をよんでみて当時には知りえなかったことがいくつかありました。読解力不足を常に指摘されるワタクシの理解ではありますが、著者はおおむね、
①地下鉄サリン事件はオウムの犯行であることは間違いないが、麻原が主導したのではなく弟子達 が暴走したもの。ただし麻原にも責任はある。「麻原が無罪』という主張はない。
③治療を施せば回復するのだからそれから裁判を継続して真相をあきらかにすべきにもかかわらず、裁 判所は麻原は(精神鑑定実施をずっと拒絶し、最後は弁護団の納得行かない精神鑑定をした上で) 訴訟能力ありとした。
⑤これは高裁がはなから「死刑ありき」のスタンスでいたからだ。・・・
等を主張しています。基本的に麻原弁護団と通ずるような主張のようです。
これに対し、日本脱カルト協会は抗議文を講談社に送付したわけですね。
罪に問えるかどうかにかかわる「責任能力」ではなく、裁判を続けることができるのか、にかかわる「訴訟能力」の有無に関する麻原の言動(新聞には載せられないような行動もあったようですね)には、それが事実なら少なくとも普通ではなさそうですが、それが演技かどうかとなるとなかなか難しいですね。
一方またそうした事実を知りながら(?)「詐病であり訴訟能力はある」として再三の精神鑑定要求を拒絶してきた裁判所の態度も頑なものだったようですね。その後の精神鑑定ではやはり訴訟能力ありとされています。
いずれにしろ法律的にはもう死刑が確定し、再審が認められなければ、あとは処刑を待つだけの状態です。
麻原本人の口から地下鉄サリン事件始め一連のオウムが引き起こした事件の真相が語られることはもうない、とうのが実態なんでしょうね。
裁判所が正しかったのか、著者の主張が正当なのか、にわかには判断がつきかねる内容の本ですが、あまりにもオウムに近い立場からの記述が多いので被害者や被害者側の裁判関係者などからは抗議がでても当然という内容でしょうか。ただ、内容の是非はともかく、いままで考えたこともなかった視点を提供してくれたことは事実です。