ジョットとその遺産展
名古屋ではまめにあちこちの美術館に足を運んでいたのですが、戻ってきてからはじめて美術館を散歩
してきました。
そして今回は…
に行ってきました。
この美術館は損保ジャパン本社の42階にあり、久しぶり高層ビルから新宿の街を眺めました。相変わ
らずごちゃごちゃしておりますね。
が、今回は彼の比較的初期のテンペラ画が5点とステンドグラス1点が展示され、彼に続くイタリアの画
家の聖母子像や宗教画がたくさん展示されていました。彼のフレスコ画は写真で紹介されていました。
その中での目玉がこの聖母子像です。(手持ちの古い資料ではウフィッツィ美術館蔵となっていました
が、今回の解説ではサント・ステファーノ・アル・ポンテ美術館像となっていました。)
この板絵の聖母子像はビザンチン絵画の影響を脱し、聖母子がより人間的に描かれている…のだそうで
す。
次のボルゴ・サンロレンツォの聖母子像の断片も初期のジョットの作品と考えられている有名な作品で
す。図版では見たことがありましたが本物は初めてでした。「小さな右手が不器用な描き方だなあ」と印
象的だったのですが、よく見ると幼子キリストの手だったのですね。キリストの手以外の部分は書けてし
まっているのです。
…偉そうに言ってますが、実は12年位前、1回目のイタリア旅行の前に初めて図版でジョットの絵を
見たとき「何だか下手な絵だなあ」と思ったのが正直なところでした。図版の解説を読んでもどこが革新
的なのかよくわかりませんでした。
しかし、その後ジョットに先立つ12世紀頃の磔刑図や聖母子像、ジョットの師匠にあたるチマブーエ
の描く聖母子像↓
などと見比べる機会が重なると、それらが素人目にも、たとえばイスタンブールのアヤ・ソフィアの2
階にある金色の強いモザイク絵の延長線上のものであり、ジョットの描く聖母子のほうがより普通の人間
に近いということがわかるような気がしてきました。
4回目のフィレンツェ訪問では、ようやくウフィッツィ美術館に予約なしで入場できましたが、そこで
目の当たりにすることができたジョットの「荘厳の聖母」に描かれた聖母マリアは、ふくよかな体を白い
服につつみ、じっと見つめているとまるで息遣いが伝わってくるかのような、ほんとに身近な存在に描か
れていました。幼な子キリストは相変わらず可愛くなかったですけれど…。
ニ礼拝堂ではジョットのフレスコ画をたっぷり楽しむことができました。そうしてジョットの作品をいろ
いろ見てくるとその生き生きとした表現が、いかにそれまでの絵画表現と異なるかがわかるような気がし
ています。
そんな感激をわかちあおうと家族でイタリアを旅行したときに、サンタ・クローチェ教会でジョットの
フレスコ画を家人・豚児に見せたのですが、残念ながら彼女らの感想はかつてのワタクシ同様「何でこん
な下手くそな絵をわざわざ見にイタリアくんだりまで来るの!?」というものでした。
我が家の食欲優先人種に、人類の遺産ともいうべき芸術作品を理解させるにはまだ時間がかかりそうで
す。
が展示されたときに鑑賞して以来2度目の出会いでした。
美術館は観客もそれほど多くなく、久しぶりにゆったりとした土曜の午後を過ごせました。