マラッカ最後の夜
マラッカ到着3日目の金曜日の夜はマラッカ滞在最後の夜となった。チャイナタウンの通称ジョンカー
通りでは、週末に露店が通りに出て、静かなマラッカの街も賑やかになるとのことだったので楽しみにし
ていたのだ。
マラッカ到着以来、曇天続きだったので夕焼けをちゃんと見ることができなかった。今日も無理だろう
と半ばあきらめ、日暮れときになってからジョンカー通りに出る。
ところが通りに出た頃に空を見ると雲が途切れ、夕焼けの太陽が見えそうな状態になってきた。
線をかたちづくっている岬との間に沈んでいった」のを感動の中で見つめているが、小生の場合は海まで
は遠いので、反対方向に戻ってマラッカ川を渡り、オランダ広場から丘に登ってセント・ポール教会跡の
あたりからかろうじて夕焼けを見ることができた。小さな小さな、でもなかなかきれいな夕陽だった。
夕陽が建物のシルエットのかげに沈むのを見届けてから再びジョンカー通りに戻ると すでに通りには
雑貨や食べ物を売る露店が出ていて見物客も集まり始めていた。
通りの出口あたりには大きな舞台が設置されていた。演劇でも始まるのかと思っていたら、大カラオケ
大会が始まった。チャイナタウンのせいか中国語の歌ばかりだったが、中には日本の演歌を歌う人もい
た。町の人には歌を聞くのも楽しみの一つのようだ。
到着以来まだマレー名物のサテーを食べていなかったので、カラオケ舞台の脇のオープンテーブルに座
って注文する。おばあちゃんが注文を取りにきたが、珍しく英語が通じなかったので、店の中に入ってサテーを焼いているところで指差して注文した。
サテーは鶏肉の脂身をそいでから焼くので、日本の焼き鳥に比べると若干ぱさついた感じがする。それ
になんといってもつけるのがピーナツ味の味噌タレ(赤い器)みたいなものなので、甘いのだ。
日本人にはタレをつけないほうが好みの味かもしれないが、せっかくマレー半島まで来たのだから地元
の食べ方でビールとともにいただいた。
カラオケをつまみにビールとサテーを楽しんだあと、ぶらぶら通りの散歩を続けると妙な?ものを見つ
けた。寿司の屋台だ。
日本でもあまり寿司の屋台は見かけないのに・・・と思いつつ、通りすぎようとしたが誘惑に抗しきれず
席についてしまった。特等席は地元の人が占領していたので、屋台の脇の席で握りの盛りきりを注文す
しても、寿司飯も酢のきき具合もほどよく、米も長粒種ではなく日本の米と同じような種類だった。醤油
もちゃんとした味のものだった。
肝心の味は・・・久しぶりの寿司だったのと、屋台で食べるという新鮮な体験だったので、意外においし
く感じた。
屋台の脇には、ご丁寧にも日本語で「蜻蛉つり 今日はどこまでいったやら 千代女」と大書したポス
ターも貼ってあった。暖簾や提灯も本格的で日本情緒たっぷり。地元でも人気があるらしくひっきりなし
に客がついていた。
思わぬ体験に大満足し、ふらりふらりと通りを戻っていくとなにやら人だかりが。人垣から覗いてみる
と大道芸のおじさんが火を口にいれたりパフォーマンスの最中だった。
芸は大したものではなかったが、感心したのはこのおじさんが、マレー語・中国語・英語・韓国語を巧み
に操って世界各地から来た見物客の気持ちをそらさないようにしていたことだった。
世界中から観光客が来るところの大道芸人に語学力は必須の能力のようだ。