パパグロッソの街歩き・一人旅

リタイア組です。身体は太いですが、ブログは細々と続けていきます。

やきもきトルコ情勢

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 イスタンブールへ行く計画をボンヤリ考え始めると今まであまり気にも留めなかったトルコ関連のニュ

ースへの関心が湧いてきた。

 最初に目にとまったのは、第一次世界大戦の頃にオスマン帝国アルメニア人を大量虐殺したとされる

ことへの非難決議をアメリカの下院外交委員会が採択し、下院本会議へ上程される騒ぎとなったことだ。

 米下院の動きに対し、NATOの一員として米軍基地があるトルコから猛反発が起こり、基地の提供拒否な

イラク軍事作戦への悪影響が懸念されたことから、ブッシュ政権の必死の工作により本会議上程は回避

されたようだ。
 
 2つ目はクルド人問題である。トルコ東南部はアルメニア・イラン・イラク・シリアなどと国境を接し

ているが、国境周辺には多数のクルド人が居住している。

 クルド人トルコ共和国独立戦争では利用されながら長い間差別され、クルド語の使用も禁止されて

きた。

トルコからのクルド人国家の分離独立を唱えるクルド労働者党PKK)は、イラク北部クルド人自治区

山岳部を拠点にトルコ軍との交戦が相次ぎ、トルコ軍に犠牲者が出ていることから、トルコ国内では国境

を越えてイラククルド人自治区へ掃討作戦を求める声が高まっているのだ。

 最近の日本の新聞の見出しだけを拾ってもその緊迫度合いが伝わってくる。

 10月18日(木)トルコ国会 イラク越境攻撃を承認―対クルド武装組織 自治区不安定化も

 10月20日(土)緊張高まるイラク国境―トルコ6万人規模、軍集結へ

 10月22日(月)トルコ交戦 44人死亡 軍とクルド組織 イラク国境緊張

 10月23日(火)PKK、停戦宣言か イラク大統領言明 トルコの圧力受け

 10月23日(火)トルコに自制求める 米政府、イラク越境攻撃で

 10月24日(水)イラク PKK活動禁止へ 越境問題 トルコの要求に応じる

 10月25日(木)PKKを越境攻撃 トルコ軍「小規模」

 10月29日(月)米の盟友国境加熱 トルコ、イラク領侵攻準備 クルド自治区、安定に暗雲
 
 11月 3日(土)イラク安定化会議始まる PKK問題が焦点

 11月 3日(土)共通の敵に対策急務 対PKK 米長官、トルコ側に

 11月 4日(日)PKK対策協力 外相会議、共同宣言を採択

 11月 5日(月)トルコ兵8人PKKが解放 対話姿勢強調か

 11月 6日(火)クルド自治政府への経済制裁 トルコ“もろ刃の剣”に 国境貿易で潤う街もPKK

          支持高める恐れ

 11月 6日(火)対PKK問題 情報共有提案 米トルコ首脳会議

 11月10日(土)トルコとの対話用意 クルド武装組織 緊張緩和狙う

 12月 2日(日)トルコ軍越境攻撃 イラク北部PKK掃討 「情報収集の一環」…


 トルコ政府はこの問題にきわめて神経質になっている。

 先日NHKシルクロードのシリーズとしてイスタンブール市内に住むクルド人家族や国境でイラクへの

物資運搬のトラック運転手の日常や不安を描いた番組を、NHKスペシャルで放送した直後、トルコ大使館

がこの問題の取り上げ方が一方的であるとしてNHK正式に抗議したことが報道された。

 小生もこの番組を見たが、イスタンブール市内に住むクルド人は差別構造の中でまともな職にも就け

ず、常に警察や軍の監視下に置かれている状況が映し出されていた。こうしたトルコの姿勢への反発から

イラク国境へ赴きPKKに加わる若者の姿も放映されていた。

 どちらかといえばクルド人に同情的なスタンスではあったが、報道の自由を侵すリスクを無視してもNH

Kに抗議するトルコ政府の苛立ちばかりが目立つ事態といえる。

 
 この問題が緊迫度を高め、トルコ軍が大規模越境攻撃をPKKに加えると、心配なのはトルコ都市部での

テロ攻撃が起こる危険が増大することである。近年イスタンブールをはじめトルコの主要都市で爆弾テロ

が起こっているので、決して油断はできないのだ。

 イラク情勢がこれ以上混迷化するのを防ぎたいアメリカは、トルコがイラク領へ越境攻撃することによ

イラク国内で唯一安定しているクルド人自治区が不安定化することを懸念し、トルコ政府の自重を必死

で求め、トルコ政府も今のところはアメリカの説得に聞く耳を持っているようだが…。


 日本の外務省の渡航情報では、米政府機関や商店、観光スポットなど人の集まるところへはなるべく行

かないように注意情報が出されている。

 はてさて、観光客はどこへいったらよいのだろうか…。