パパグロッソの街歩き・一人旅

リタイア組です。身体は太いですが、ブログは細々と続けていきます。

ソウル散歩行⑦ 2日目 カシャ・カシャーン・・・

 朝食もいただき、身体も暖まってきました。外も明るくなってきました。それでもまだ時刻は午前8時前です。

 
 この時間ではほとんどの観光スポットはまだ開いていませんね。といって喫茶店で時間をつぶすのも芸がありません。ということで24時間年中無休で営業している観光スポットに行ってみることにしました。
 
 ガイドブックを見ると、そこは地下鉄でひと駅南に行ったソウル駅近くにあります。服装?にもそれほどうるさくないようです。
 
 さっそく市庁駅に戻り、こんどは地下鉄1号線に乗り、隣駅のソウル駅で降りて8番出口から地上に出ます。そのまま大きな通りに沿って歩き、大宇財団ビルとSK南山ビルの間の坂道を登っていくと目的地に到着です。
 
 到着したのはミレニアム・ヒルトンホテルに併設されたセブンラック・カジノでした。
 
 今回のソウル弾丸ツアーでは、せっかくなら日本では体験できないことをやってみようと思いつき、前夜は明洞で拳銃射撃を試しましたが、ほんとにお金を賭けるカジノはもちろん今の日本では非合法ですので、外国でしかできない娯楽ということですね。
 
 
 
 到着した・・・と思いましたが、どうやら正門ではなく、ホテル・カジノの駐車場の入り口に着いてしまったようです。
 
 駐車場で車を降りてホテルやカジノに行く人も当然いるので中に入ればわかるだろうと思い、ノコノコ歩いて駐車場に入っていきます。
 
 カジノで大儲けを狙って来るような人は高級車で正面の入り口に乗りつけ、キーをボーイに渡してカジノにいざ出陣するのが当たり前なのでしょう。エッチラオッチラ歩いて、しかも裏口の駐車場から入場する客もあまりいないでしょうね。
 
 とにもかくにもカジノの入り口にたどり着きました。入り口ではスーツをビシッと来た男性係員がいて入場客の案内をしています。ワタクシは、見た目軽視・暖房優先の完全武装の服装でしたが、特に何も言われませんでした。もちろんマスクは外してましたけど・・・。
 
 すぐにパスポートを見られました。カジノは国内在住の韓国人はお出入り禁止なんですね。しかも撮影も一切禁止です。したがって今回は残念ながら写真はあまり掲載できません。入場は無料です。
 
 入り口の横にブースがあって若い女性の係員が二人います。入場する前にそこに行ってメンバーズカードを作ってもらいました。別にこれから足繁く通うためではなく、無料で作れるので旅のお土産にと思って作ることにしたのです。こういうセコイまねをするようでは100億円を賭けるなんて無理ですな。
 
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 ガイドブックによると、荷物検査、特にカメラの持ち込みにはうるさく、荷物も預けること、となっていました。肩掛けポーチをしていましたが別に何のチェックもなく、カメラもそのまま持ち込みました。さすがに撮影はしませんでしたけど・・・。
 
 日本語は通じましたが、ガイドブックにあるような「ゲームの仕方を親切に解説」なんてことはありませんでしたね。
 
 場内に入ってみて、思っていたよりスペースは広くない、という印象を受けました。ソウルには漢江の向う側にあと二つ有名なカジノがありますが、そちらはどうなのでしょうね。
 
 24時間営業とはいえ、朝9時前後の時間帯でしたのでお客の数もあまり多くありません。
 テーブルで客がついて勝負しているのはカード(たぶんバカラ)とルーレットだけでした。それも全部の台ではありません。
 
 ルーレットもバカラも興味がない(というよりはルールを知りません)のでまずはスロットマシーンのコーナーに行ってみました。ここもガラガラです。
 
 台の前に座り機械を眺めます・・・ワタクシはギャンブルは元々苦手なので、日本でもスロットをやったことがありませんでした。スロットマシンというのはコインを入れてレバーをガッチャンと降ろすと画面の数字や絵がくるくる回って自動的に止まって、その出目であたりはずれが決まるもの、と思い込んでいました。
 
 ところが、ここの機械にはレバー以外にやたらとボタンみたいなのがついています。日本のパチンコ屋さんのスロットマシンも同じなのでしょうか。結局やり方がわからず賭けないままで別のコーナーに移ります。我ながらまことにアホらしい限りであります。
 
 これではならじ、と満を持して狙っていたテーブルに向います。実はワタクシはカジノに行く機会があったら 「大小(タイサイ)」という博打をやってみたい、とかねてから思っていたのです。
 
 
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 ご存知の方も多いでしょうが、日本のチンチロリンに少し似ていますが、大小は3つのサイコロをディーラーが転がし、3つのサイコロの出目をあてる賭博です。
 サイの目の出方によって賭金が戻ってくる倍率が1倍から50倍になります。一番単純なのが3つのサイコロの合計が4から10までが「小」、11-17が「大」とされ、倍率は1倍、つまり1000ウォン賭けると当たれば賭けた1000ウォンとさらに1000ウォンが戻ってくるということですね。
 
 
 何故「大小」に興味を持ったかと言いますと、わが愛読書 沢木耕太郎著「深夜特急」に沢木氏がこの「大小」にのめりこむシーンが劇的に描かれていて興味深く読んでいたからなのです。
 
 「深夜特急」の各編のあまたあるエピソードの中でもとりわけ読者を惹き付けた、マカオのホテル・リスボアのカジノで「大小」に翻弄されるシーンが展開されます。
 あわや路銀を失ってスッテンテンになりそうになった沢木氏が、仰天の手で負けの大半を取り返します。そこでは・・・
 
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「・・・カシャ、カシャ、カシャ。ディーラーのプッシュする音が残響のようにいつまでも耳の奥から聞こえてくる。
 カシャ、カシャ、カシャ。 カシャ、カシャ、カシャーン・・・・。
 おや、と思った。
 プッシュされる時の音が微妙に違うのだ。私は賭けるのを中断し、プッシュの音に耳を済ませた。
 ・・・カシャ、カシャ、カシャーン・・・・。
 三つ目のプッシュ音が、ほんの僅かながらどこかに引っ掛かるように感じられた時、大が出た。・・・」 
 
 というふうにまるで天啓を受けたように、ディーラーの指が三つのサイコロを転がすボタンをプッシュする際に引っ掛かりがあることに気がつき、以降は3つ目の「カシャ」と「カシャーン」を聞き分け、立て続けに的中していくことになります・・・。
 
 ワタクシが入場したときは「大小」テーブルにはディーラーの女性はいたものの、客がいませんでしたが、スロットマシーンの前でモタモタしてテーブルの方に戻ってくると客が着き始めました。
 
 そこでワタクシも内心ドキドキしながらテーブルに着きますが、残念ながら真ん中の席は先客がいて右端あたりの席になってしまいました。その先客が1万円札を出して女性ディーラーに渡します。するとディーラーから丸いチップがどっさりと渡されます。おお、ここでゲームチップに替えられるんだ・・・。
 
 そこでワタクシも南大門から飛び降りる気持ちで10万ウォン(約6900円)札と作ったばかりのメンバーズカードをディーラーに渡すと、1枚5千ウォン(約345円)のチップが20枚戻ってきました。ということはこのテーブルの最低の賭け金は5千ウォンということのようです。
 
 さて、いよいよ生まれてはじめてのカジノ体験です。
 
 「カシャ」「カシャーン」だぞ・・・。
 
 耳を澄まします・・・。
 
 
 「チンコロリン」
 
 ・・・
 
 沢木耕太郎氏がマカオで「大小」に嵌まったのは彼が26歳、今から40年前のことでした。その頃はディーラーのテクニックがものをいう手動の機械だったんでしょうね。
 
 今はボタン一つを押すとケースの中の三つのサイコロが電気仕掛けで激しく舞い踊ります。・・・「カシャ」でも「カシャ-ン」でもありませんでした・・・。
 
 それはともかく、サイコロが動きを止めたとき近眼のせいもありますが、ワタクシからはどんな目が出たかサッパリ見えません。勝敗の結果はチップを賭けた場所が点灯すれば勝ち、しなければ負け、ということでわかるのですが、点灯するまではまったくわからない、というちょっと間抜けなことになっています。しかもディーラーが3つのサイの目を告げるようですがこの目で確かめられないのです。
 
 おまけに、ワタクシの座った場所はテーブルの右端で「大」はすぐ近くなのでチップを置いて賭け易いのですが、「小」は反対側の一番遠いところにあるため、賭けるためにはチップを投げなければなりません。いくら日頃ヒマなワタクシでも、チップを狙ったところに投げる練習はしてきませんでした・・・。
 
 それやこれやで当初思い描いていた「大小」の雰囲気とちょっと違う展開となってしまい、次第に興味も薄れ、何回か「大」であたりをとりましたが、外れの方が多く、まだチップが結構残っているうちに引き上げることにしました。
 
 両替所でチップをウォンに交換すると8万ウォンが戻ってきました。結局2万ウォンの負けということでした。
 
 沢木氏のように博打の真髄を知るまでには至りませんでしたが、文字通り「打つ」をチョッピリ体験し、カジノの雰囲気を垣間見ただけでもなかなか面白い場所でした。
                                   (つづく:またまた長くなってすいません)